広尾に店を構える「分とく山」は、素材の自然な味わいにこだわった日本料理の名店。鮮度を大事にすることから、これまで数を作らず「常連さん限定」だったおせちだが、今年は数を増やして提供することに。

「一年のはじまりの日に皆が笑顔になれるような美味しいおせち料理をお届けしたい」そう語る阿南料理長が、手間と時間をとことんかけて作り上げた全33品が詰め込まれた、分とく山自慢のおせち料理。その全貌に迫ります。






丹念に仕込み、大晦日に仕上げる三段重

時間をかけて仕込みを始めて、仕上げは大晦日。からすみや数の子は約2か月かけて、豆類は丁寧に戻して炊き、蒲鉾は自家製で海老や穴子と合わせて作られる。分とく山のおせちは、それほどまでに丹念に作られているのかと驚くほど、一品一品に手が込んでいる。

「全て手作りで添加物を使用していないので、できれば元旦のうちには食べきってほしい」と、料理長。そんなこだわりの「生おせち」は、これまで料理長自ら大晦日に常連さんにお届けしていた。おのずと数も限られてしまっていたが、今年は、GO Dineによって、タクシーでお届けできることになった。「年末の忙しい時期に、お客様が店舗に取りに来なくてもおせちを注文できる方法が増えたことがとても有難い」

作り置きではない、足が早いからこそ美味しさもひとしおの、人肌感溢れる生おせち。それではさっそく、一段ずつ開いて中身を見ていこう。

【まずは、一段目】

「正直、年末に活きている伊勢海老を仕入れるのは、業者にも驚かれます。一番値が張る時期なので」しかし、阿南料理長のこだわりは揺るがない。「冷凍ではなく、直前まで活きているものを」と、鮮度へのこだわりがいかんなく発揮された伊勢海老を中心に、黒豆、数の子、からすみ、栗きんとんなどのおめでたい品々が、所狭しと詰め込まれた華やかなお重だ。

【続いて、二段目】

つややかに輝く、いくらの醤油漬けを中心に、魚のすり身から手作りしている伊達巻き。鮭昆布巻き、鰤(ぶり)粕味噌焼などが詰まった二段目。注目は、右上の黒い粒状のものがまぶされた、紫花豆の蜜煮。荏胡麻(えごま)をまぶしたお豆で外はカリッと中は柔らかく仕上がった今年の新作料理だ。

【そして、三段目】

大きなあわびを囲むのは、海老と穴子の2種類のかまぼこ、絹田巻、子持ち昆布など。魚卵は「子孫繁栄」、海老は「背中が曲がるまで長生きを」など、一つ一つおめでたい祝い言葉を体現した料理が詰まっているのがおせち料理。鮮やかな紅白の背中がくるりと曲がった海老の艶煮がずらり並ぶ姿が美しい。

特に注目の7品をピックアップしてご紹介

一つ一つの料理が全て逸品と呼べる繊細な手仕事で丹念に作られた分とく山のおせち料理。その中でも特に料理長が推す、特別な7品に注目した。

注目の逸品

数の子、からすみ

数の子、からすみ

べっ甲色の美しい数の子(左)と、しっとりとした触感のからすみ(右)は、酒粕と白味噌に1~2カ月漬け込んで作られる。口の中でほろりとほぐれる数の子に、皮まで柔らかいからすみ。自然の塩味で時間をかけて漬けるからこそ生まれる、やさしくも品の良い味がたまらない。
あわび福良煮

あわび福良煮

「分とく山といえば、あわび」と言われるほどの看板メニュー。こちらも、数の子とからすみと同じく、白味噌に漬け込んでおいしくねっとりとするまで熟成させる。蒸し上げた後に1~2カ月漬け込むことで、美味しさを凝縮させて仕上げる、手間をかけた逸品だ。
海老蒲鉾、穴子蒲鉾

海老蒲鉾、穴子蒲鉾

丁寧にすり身にされた魚が、舌の上でやさしくほぐれる蒲鉾(かまぼこ)も、職人の手間と時間が惜しみなく注がれたこだわりの逸品。穴子とセロリを一緒に混ぜ合わせ、蒸しあげた穴子蒲鉾は、他にない新鮮な味に仕上がっている。
黒豆蜜煮

黒豆蜜煮

厳選されたこだわりの国産の豆を使用した黒豆は、米のとぎ汁に漬け込む。そして、その豆をまた一週間かけてゆっくりと戻す丁寧な調理工程を踏む。まるで和菓子のように口の中でふわっとほどけるやわらかさ。甘過ぎず、口福を感じる旨さ。「やさしい」という表現が一番似合う、口どけと味わいだ。
いくら醤油漬

いくら醤油漬

生で仕入れ、すじこからほぐし自家製醤油で漬け込んだ、自家製のいくら。冷凍は使わない、フレッシュさにこだわったからこその味わいが口の中に広がる。自然な旨味に対するこだわりが、いかんなく発揮されたひと品だ。
伊達巻き

伊達巻き

白身魚のすり身を玉子とよく混ぜ合わせ、丹念に焼き上げ巻き込んだ伊達巻。既製品では出せない繊細な味わいは、子どもの舌から大人の舌まで虜にすること間違いなしだ。

【料理長の思い】2022年こそは素晴らしい一年に

素材の自然な味わいを極限まで引き出す、鮮度にこだわった生おせち。2022年に向けて、じっくりと仕込みはじめた阿南料理長に、おせちに込めた思いを聞いた。

美味しいものは、人を元気にする

編集部
とても手の込んだ、力の入ったおせち料理ですね。来年のおせち料理に込めた思いを教えてください。
阿南
日本中、いや世界中が大変だった2021年。お客さんの中にも行き詰った話をされる方がいらっしゃいました。2022年こそは良い一年にできるよう、食べていただく方にも元気をお届けしたい。辛いこと・哀しいことがあってもおいしいものを食べると元気が出ますよね。新しい年に向けて、そんな料理を届けたいと思いました。

お酒と共に、皆でおめでたい一日を

編集部
阿南料理長の思いの込もったおせち料理。どんな風に味わっていただきたいですか?
阿南
「一年なんとか乗り切ってよかったね」そう家族で囲んで、お酒とともに楽しく味わってくれたら嬉しい。おすすめは、やはり日本酒と。季節的にもお燗でいただくのが良いのではないでしょうか。ひとつひとつの料理に込められたお祝い言葉の意味を皆で会話しながら、一年を振り返ったり、次の一年の楽しい話をしながら味わってもらえたらいいですね。

GO Dine 編集部 実食レポ

阿南料理長のこだわりとやさしさが詰まったおせち料理。僭越ながら編集部が実食し、その魅力の一端をレポートします!

Photographer

鮫島

じゃこの田作りが印象的でした。田作りは、子どもの頃に感じた苦みの印象が強くどちらかというと苦手な料理でしたが、この田作りは、一緒に入っているナッツやくるみの風味も感じられる苦み無しのやさしい味わい。日本酒はもちろん、ワインとも楽しめそう。

Stylist

金子

からすみが従来のイメージと一線を画した、ねっとりと柔らかい食感で、しっかりとした日本酒と交互に、永遠に食べていたくなるような味でした。お腹の底から「旨い……」と唸りたくなる深い味。ご飯やお餅などに合わせても美味しくいただけそう!

Campaign
家で味わう贅沢を
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